第三十四計 苦肉の策をめぐらせ
「人は自ら害せざれば、害を受くること必ず真なり。仮を真とし真を仮とせば、間は以て行うことを得」「苦肉計」とは、自分を傷つけて(自軍の部隊を攻撃したり、ひいては殲滅させたりして)、敵軍に錯覚を起こさせ、敵軍の離間を策す作戦である。」
時代背景
本計の例話も南宋の初年のころである。南宋の高宗は、靖康の変、すなわち北宋末の靖康年間(一一二六~二七年)、国都開封が前後二回、金の軍勢の攻撃を受けて陥落し、皇帝らがみんな拉致されて連れ去られたとき、ただ一人金の手にかからず残って南宋を再建した人である。高宗は北宋最後の皇帝欽宗の弟であったので、すぐ再建にとりかかることができたのである。本計の例話に出てくる陸文龍は、潞安州(現在の山西省長治市を中心とする地区で、長治市は鄭州の北北東二百キロにある)の節度使(地方長官)の息子であったが、金軍に両親を殺され拉致された。このように金の軍勢は兵力を補充するため占領地から多くの将兵を徴発した模様である。
岳飛の部下、苦肉計により南宋軍を救う
自分で自分を傷つけるものは無く、必ず他人から傷つけられる。傷つけられたと嘘の芝居を演じて、敵側にその芝居を信じ込ませることができれば、敵側を離間させることができる。